2008年の厚生労働省調査で、画面作業の症状がある人の訴えは、1位が目の疲れ、2位が首・肩のこり。

『夕方になると目がしょぼしょぼして、同時に肩も重い』。調査では目と首肩の症状が上位ですが、同時に起きる原因までは分かりません。そして目の疲れ対策として有名な「20-20-20ルール」(20分ごとに20秒、6m先を見る)は、調べてみると、研究の裏づけが思ったより薄い。今回はこの2つを、調査と研究の数字で追います。

株式会社COmedi 代表取締役 久保聖史

SUPERVISOR / この記事の監修者

久保 聖史

株式会社COmedi 代表取締役

資格柔道整復師

  • Asia Massage Championship2024 審査員
  • Massage World Championship2025 審査員
  • Asia Massage Championship2026 審査員

調査の数字:目の疲れ90.8%、首・肩のこり74.8%

夕方のデスクに置かれた眼鏡とノートパソコン

厚生労働省の「技術革新と労働に関する実態調査」(平成20年)では、仕事でパソコンなどの画面を使う労働者のうち、身体的な疲労や症状を感じている人は68.6%。その内訳(複数回答)は、「目の疲れ・痛み」が90.8%でいちばん多く、次が「首、肩のこり・痛み」74.8%、「腰の疲れ・痛み」26.9%でした。

目と首肩が、1位と2位。しかも1日の作業時間が長いほど、症状を感じる人の割合は上がり、4〜6時間で81.7%、6時間以上で84.9%。連続して作業する時間でも、30分未満より長い区分で症状の割合が高くなっていました。

ただし2008年の調査で、いまのスマートフォンやリモートワークの環境とは違います。目と首肩が症状の上位にあることは分かりますが、この集計だけで同じ人に同時に出るとは断定できません。

なぜ目と肩は一緒に疲れるのか

一緒に考えるうえで、目を向けたい点が2つあります。

一つは、距離と姿勢。画面を見るとき、前かがみや同じ姿勢が続いていないでしょうか。見やすい文字の大きさや明るさ、画面の位置を整えることも大切です。日本整形外科学会は肩こりの原因に、首や背中が緊張する姿勢での作業と、長時間同じ姿勢を続けることを挙げています。目を使う際の姿勢にも、注意したいということです。

もう一つは、目の側の疲れそのもの。日本整形外科学会は、肩こりが眼の病気に伴って出ることも少なくない、と書いています。近くを見続けるとピントを合わせる筋肉が働き続け、まばたきが減って目が乾く。画面を使う人の50%以上に、こうした目の症状(デジタル眼精疲労)があるという推計もあります。ただし、目の疲れが首肩の症状を引き起こすと、この数字だけで判断はできません。

てことは、首肩だけでなく、目と画面の環境も見直したい。どちらへの対処が先かは、この資料から決められません。

「20-20-20ルール」の根拠を調べてみた

窓の外に緑が見える明るい窓辺

目の疲れ対策でいちばん有名なのが「20-20-20ルール」。20分ごとに、20秒間、20フィート(約6m)先を見る、というものです。よく紹介される目安ですが、研究で確かめられた範囲は分けて読みたいところです。

2023年に発表された研究(Johnsonら)は、まさにこのルールを確かめたものです。30人の若い人に、タブレットで40分間、集中を要する読み取り作業をしてもらい、20秒の休憩を5分ごと・10分ごと・20分ごと・なし、の4条件で比べました。結果、どの条件でも作業後に目の症状は増えていて、休憩の間隔による差はありませんでした。読む速さにも正確さにも差なし。著者らは「20秒の休憩を治療として使うことを、この結果は支持しない」と書いています。

一方で、2025年の研究(Redondoら)は、休憩の「取り方」を変えて調べています。24人に同じく40分の読み取り作業を、休憩なし・20分で1回・10分ごとに1回・自分のタイミング、の4条件で。こちらは、休憩なしの条件で「目の刺激感や灼熱感」「目の疲れ」が有意に強く、10分ごと、または自分のタイミングで休んだ条件のほうが軽かった。作業後に一時的に起こる近視の状態も、休憩なしで強く出ていました。

2つを並べると、2023年の条件では休憩間隔の差が確認できず、2025年の条件では休憩なしより症状が軽い条件があった、となります。研究の条件が異なるため、単純比較して「時間より回数が重要」と結論づけることはできません。

ただし、どちらも24〜30人の若い人で、40分の実験です。1日8時間の仕事に、そのまま当てはめることはできません。首肩の症状は測っていないので、「休憩で肩こりが減る」とも言えません。

厚労省の目安と、研究を合わせた線引き

厚生労働省の「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」は、パソコン仕事の環境について、次のように示しています。

  • 1時間以内で1サイクルとし、サイクルの間に10〜15分の作業休止、サイクル中にも1〜2回の小休止
  • ディスプレイは目から40cm以上離し、画面の上端は目の高さと同じか、やや下
  • 画面の位置・角度・明るさを調整する
  • 長時間同じ姿勢にならないよう、ときおり立ち上がる

これに、さきほどの研究を重ねて、ボクが提案したい線引きは次の3つです。

  • 画面との距離を先に直す。40cm以上、画面の上端は目の高さと同じか、やや下を目安に。文字が小さければ、首を伸ばすのではなく、文字を大きくする。
  • 休憩の取り方を見直す。たとえば10分ごとに画面から目を外す機会を作る。これは研究を踏まえたボクの提案で、最適な間隔や長さが決まったわけではありません。
  • 1時間に1回は立つ。同じ姿勢を区切るためのボクの提案です。厚労省は連続作業を1時間以内とし、その途中にも小休止を求めています。

3つとも、「やれば肩こりが消える」と約束するものではありません。目の疲れが続く、視力が落ちた気がする、頭痛を伴う、という場合は、整体より先に眼科です。目の病気や見え方の問題がないかを、眼科で確認してもらいましょう。

首肩のこりで来院される方へ

HALII TOKYO.へ肩こりを相談される際は、仕事で画面を見る時間や、目の症状で気になることもお伝えください。首肩を局所だけで見ず、全身の連動や原因の組織から見立てる方針だからです。そのうえで、身体の状態を説明しながら施術を進め、施術後にもう一度検査をして変化を確認します。

目の症状そのものは整体の対象ではないので、目の疲れが強い方には、眼科での確認を先におすすめすることがあります。

いま、画面と目の距離は何cmですか? 距離は腕の長さで換算せず、定規やメジャーで一度測ってみてください。

参考文献