お風呂で寝つきが良くなるかどうかは、「いつ・何度で・何分」入るかも関係するようです。

『疲れた日ほど熱いお湯に長く浸かりたい』『寝る直前に入ると、かえって目が冴える気がする』。どちらも、よく聞く話です。実はこのテーマ、入浴と睡眠の研究を17本集めたレビューがあって、温度・時間・タイミングの目安がかなり具体的に出ています。

今回はその数字を軸に、お風呂と眠りの関係をたどってみます。

株式会社COmedi 代表取締役 久保聖史

SUPERVISOR / この記事の監修者

久保 聖史

株式会社COmedi 代表取締役

資格柔道整復師

  • Asia Massage Championship2024 審査員
  • Massage World Championship2025 審査員
  • Asia Massage Championship2026 審査員

お風呂で眠くなるのは、温まるからではなく「冷めるから」

意外に思われるかもしれませんが、眠りに関係しているのは、身体が温まることそのものではなく、そのあと体温が下がっていく過程です。

厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」には、こう書かれています。ヒトの深部体温(脳や内臓など、身体の内部の温度)はおよそ24時間周期で変動し、日中は上がり、夜の睡眠時には下がる。就寝前に手足の皮膚の血流が増えて熱が外へ逃げ、深部体温が下がり始めると、眠りに入りやすい状態になる。

お風呂は、この「手足から熱を逃がす」スイッチを入れる道具なんですね。温まった身体が、手足の血管を広げて熱を放す。その放熱の流れに乗って深部体温が下がっていくから、寝つきやすくなる。だから、入った直後ではなく、少し時間を置いたほうが眠りには都合がいい、という理屈になります。

研究の数字:40〜42.5℃、10分、寝る1〜2時間前

湯気の立つ浴槽と木製の湯温計

2019年に睡眠医学のレビュー誌に載ったシステマティックレビューとメタ解析(Haghayeghら)は、寝る前に温かいお風呂やシャワーで身体を温めること(受動的加温)が睡眠にどう影響するかを調べた研究を集めたものです。5,322本の候補から条件に合う17本を選び、そのうち13本で数値をまとめています。

結果を3つの数字で整理すると、こうなります。表の湯温は研究で扱われた条件で、安全上の推奨温度とは別です。

項目 研究で扱われた条件 報告された関連・変化
湯温 40〜42.5℃ 本人が感じる睡眠の質と、睡眠効率(床にいた時間のうち眠っていた割合)の改善
タイミング 就寝の1〜2時間前 寝つくまでの時間(入眠潜時)の短縮
時間 10分程度の短時間でも報告 同上

寝る1〜2時間前に、10分程度の短い入浴でも寝つきの改善が報告された、という結果です。長く入るほどよい、と示した研究ではありません。

睡眠ガイド2023も同じ方向で、「就寝の約1〜2時間前に入浴し身体を温めてから寝床に入ると入眠しやすくなる」と、環境づくりの項目に明記しています。

ただし、著者らも書いているとおり、この分野は研究の数そのものが少なく、最適なタイミングや時間、効く仕組みの詳細はまだ詰め切れていません。「1〜2時間前に10分入れば必ず早く眠れる」とまでは言えないので、そこは要注意。

熱いお湯に長く、は眠りの面でも安全の面でも逆方向

『冬は身体が冷えるから、熱いお風呂に長く浸かっている』という方、多いと思います。

睡眠ガイド2023のQ&Aには、まさにこの質問があります。答えは、就寝の約1〜2時間前の入浴は入眠を促す効果が期待できる一方、極端に湯温が高いと交感神経の活動が高まり、かえって入眠を妨げる可能性もある、というもの。身体を「休むモード」に切り替えたい時間帯に、熱いお湯で「活動モード」のスイッチを押してしまう格好です。

安全の面でも同じ方向の目安が出ています。消費者庁は、入浴中の事故を防ぐための注意点として、湯温は41℃以下、湯につかる時間は10分までを目安にすること、入浴前に脱衣所と浴室を暖めておくこと、浴槽から急に立ち上がらないこと、食後すぐや飲酒後の入浴を避けることなどを挙げています。高齢者向けの注意喚起ですが、入浴中の事故は持病や前兆がなくても起こりうる、とも書かれています。

研究で扱われた40〜42.5℃を、そのまま家庭での推奨温度と受け取らないこと。安全のための目安は41℃以下・10分までなので、ここは分けて考えておきたいところです。

シャワーだけの日は意味がない?

これも気になるところ。先ほどのレビューは、お風呂だけでなく温かいシャワーも「受動的加温」として含めて分析しています。つまり、湯船に浸からなくても、温かいシャワーで身体を温めて、そのあと放熱の時間を取る、という流れ自体は同じ。

ただ、このレビューの抄録だけでは、シャワーと湯船を直接比べて「どちらがどれだけ」とは言えません。両者の効果が同じとまでは確認できない、くらいに受け取っておいてください。

ボクの線引き

寝室のサイドテーブルに置かれた時計と水と靴下

研究からボクが引く線は、「お湯の温度を上げすぎない」「寝る直前には入らない」の2つです。寝る時刻から逆算して、1〜2時間前に、41℃以下・10分までを目安に。それでも足先が冷えて寝つけない夜は、お風呂を熱くする方向ではなく、靴下で足を温める方向を試す。靴下についてはThreadsにも書きましたが、韓国の若い男性6人を対象にした小さな研究で、靴下をはいた夜のほうが寝つくまでの時間が平均7.5分短く、途中で目が覚める回数も少なかった、というもの。6人・男性だけ・1晩ずつなので「靴下で眠れる」とは言えませんが、試すコストはほぼゼロです。

お風呂のあとの身体は、手足から熱を逃がしている最中です。睡眠ガイド2023が環境づくりとして挙げているのは、寝室を暑すぎず寒すぎない温度にすること、スマートフォンやタブレットを寝室に持ち込まず、できるだけ暗くして寝ること。お風呂で入れたスイッチを、寝室の環境で邪魔しない、という組み合わせですね。

冷えやむくみが気になる方へ

「夏でも手足が冷たい」「夕方になると脚がむくむ」という方は、入浴の工夫とあわせて、身体の巡りそのものを見直す余地があるかもしれません。HALII TOKYO.では、初回の問診と検査で、身体の状態を確認したうえで、その状態を説明しながら施術を進めています。

今夜のお風呂、何度で、寝る何時間前に入りますか。湯温計をひとつ置いておくと、安全面の目安を確かめながら、入浴を見直せます。

参考文献

  • Haghayegh S, et al. Before-bedtime passive body heating by warm shower or bath to improve sleep: A systematic review and meta-analysis. Sleep Medicine Reviews. 2019;46:124-135. PubMed
  • 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」(令和6年2月、健康づくりのための睡眠指針の改訂に関する検討会) 厚生労働省PDF
  • 消費者庁「みんなで知ろう、防ごう、高齢者の事故」入浴中の事故 消費者庁の注意喚起
  • Ko Y, Lee JY. Effects of feet warming using bed socks on sleep quality and thermoregulatory responses in a cool environment. Journal of Physiological Anthropology. 2018;37:13. PubMed