「座りっぱなしはよくない」は、もう誰でも知っている。知りたいのは、何分おきに立てばいいのか、です。
『気づいたら3時間座っていた』『立ったほうがいいとは思うけど、何分ごとが正解なのか分からない』。この「何分」は、血糖、腰の不快感、脚のむくみの研究で、同じ意味では使われていません。今回は、研究で試された区切りと、測定のための時間を分けて、数字の出どころを見ていきます。
SUPERVISOR / この記事の監修者
久保 聖史
株式会社COmedi 代表取締役
資格柔道整復師
- Asia Massage Championship2024 審査員
- Massage World Championship2025 審査員
- Asia Massage Championship2026 審査員
血糖:20分ごとに2分歩くと、食後の血糖の上がりが小さかった

オーストラリアの研究チームが、過体重・肥満の45〜65歳の19人に、3つの条件をすべて試してもらったクロスオーバー試験です。座りっぱなし、20分ごとに2分の軽い歩行、20分ごとに2分の中強度の歩行。糖と脂質の試験飲料を飲んだあと5時間の血糖の上がり(iAUC)を比べると、座りっぱなし6.9に対して、軽い歩行5.2、中強度4.9 mmol/L·hでした。インスリンも、歩行で区切った両条件で小さくなりました。
軽い歩行でも、座りっぱなしより小さかった。ここは注目したいところです。ただし、この結果を「軽い歩行と中強度の歩行は同じ効果」と読むことはできません。
ただし19人で、試験飲料を飲んだあとの短時間の反応です。ふだんの食事や、長い目で見た健康への効果を、そのまま説明する数字ではありません。
2020年のシステマティックレビューは42研究を整理し、うち37研究をメタ解析しました。座りっぱなしを身体活動で区切る条件では、食後の血糖とインスリンの上がりが小さく、標準化平均差はそれぞれ−0.54と−0.56でした。BMIと反応の関係も分析されていますが、研究間の傾向を、個人への効果の保証にはできません。動き方や間隔は研究ごとに異なり、この解析から全員に最適な「何分おき」が決まったわけではありません。
腰痛:「何分おき」が最適かは、まだ決まっていない

腰については、話が変わります。
2021年のシステマティックレビューとメタ解析は、座る時間と筋肉・関節の痛みの関係を79研究でまとめました。仕事で座る時間が長い人は、腰痛を持つオッズ比が1.47。これは関連を示す数字で、座るから腰痛になったのか、腰痛だから座っているのかを決めるものではありません。介入研究では、座る時間を減らす取り組みで痛みが減る方向の結果もありました。
「間隔を試した研究がない」ということでもありません。2014年の試験では、過体重・肥満のオフィスワーカー23人が、座って仕事をする条件と、30分ごとに座位・立位を交代する条件を、それぞれ5日間試しています。交代する条件では腰の不快感が小さくなりました。ただし、30分が20分や60分よりよいかを決める比較ではなく、すべての腰痛の治療に使える数字でもありません。
厚生労働省の「職場における腰痛予防対策指針」も、座り仕事については「同一姿勢を長時間取らない」「適宜、立ち上がって腰を伸ばす等、姿勢を変える」と書いていて、分数は示していません。パソコン作業のガイドラインには「1時間以内で1サイクル、サイクルの間に10〜15分の作業休止」とありますが、これは目や疲労のための作業管理の目安で、腰痛が減ると検証された数字ではありません。
てことは、腰については「30分を使った試験はある」と「30分が最適と決まった」は別の話です。同じ姿勢が続く作業を見直す考え方はありますが、痛みの原因や身体の状態を無視して、分数だけを決めることはできません。
むくみ:朝と7時間後に測ると、脚の体積は約60〜90mL増えた
脚のむくみは、以前のコラムでも取り上げた研究があります。健康な12人の両脚の体積を朝と7時間後に測ると、着圧していない脚では平均で左62.4mL、右94.4mL増えていました。この7時間は測定の間隔です。「7時間ずっと座らせた実験」の数字として読むことはできません。
研究は12人・4日間で、片脚に異なる圧の靴下を履く条件を比べ、着圧による脚の体積の変化を調べたものです。立つ・歩く休憩の間隔を比較していないので、「何分おきに動けばむくみを防げるか」は分かりません。血糖や腰痛と同じ仕組み、同じ間隔で説明することもできません。
3つを並べると
※画面が狭い場合、表は横にスクロールできます。
| 何を気にするか | 研究で使われた時間 | 分かっていること | まだ分からないこと |
|---|---|---|---|
| 血糖 | 20分ごとに2分歩行(19人の試験)。レビューの条件はさまざま | 試験飲料後の血糖・インスリン反応は、歩行で区切る両条件で小さかった | 長期の健康への効果、最適な間隔 |
| 腰の不快感 | 30分ごとに座位・立位を交代(23人・各5日間) | 座り続ける条件より腰の不快感が小さかった | 他の間隔との優劣、すべての腰痛への適用 |
| 脚のむくみ | 朝と7時間後の測定(12人) | 着圧なしの脚では夕方に体積が増えていた | 立つ・歩く休憩の最適な間隔 |
血糖と腰の試験に出てくる20分・30分は、実際に試した方法の一部です。むくみの7時間は、朝と夕方を比べるための時間。意味の違う数字を並べて、健康全般に共通する「正解の間隔」を作ることはできません。
ボクが提案したい、ひとつの間隔
ここから先は研究の結論ではなく、3つを見たうえでの提案です。
「20分ごとに2分歩く」を、そのまま仕事中に続けるのがむずかしい人もいると思います。だからボクは、まず座り続けていることに気づく合図として、30分を試してみるのはどうか、と考えます。これは続け方の提案です。30分の合図で少し立つだけの方法は、研究の「20分ごとに2分歩行」や「30分ずつ座位・立位を交代」とは違います。
- 30分に1回、姿勢を確認する合図を入れる。立てる環境なら、安全を確かめて飲み物や資料を取りに歩くなど、作業の区切りを作ってみる。短い移動や立つだけで、引用した試験と同じ効果が出るとは言えません。
- 会議や集中作業では、実際に休止できる時点を決めておく。情報機器作業の指針は、一連続作業を1時間以内とし、その間に1〜2回程度の小休止、次の連続作業までに10〜15分の作業休止を設ける考え方です。「1時間ごとに一瞬立てば十分」という意味ではありません。
- 痛みやふらつきがあるときは、分数を守るために無理に立たない。動き方や運動量は、体調と作業環境に合わせて考えてください。
これらは、「やれば腰痛が消える」「血糖が正常になる」「むくみがなくなる」と約束するものではありません。糖尿病や血圧の治療中など、運動の制限がある方は、内容を主治医に確認してください。
腰痛が安静でも軽くならない、悪化する、発熱や脚のしびれ・力の入りにくさ、尿漏れを伴う場合は、自己管理で様子を見ず、すみやかに整形外科へ。突然片方の脚に力が入らない、急な息切れ・呼吸困難がある場合は119番です。原因の分からない、続くむくみも「座っているせい」と決めず、医療機関へ相談してください。
整体院で相談するときに伝えたいこと
整体院へ相談するときは、仕事の内容や、どんな姿勢でつらくなるかを伝えてください。HALII TOKYO.では、問診と検査から身体の状態を確認し、局所だけでなく全身の連動や原因になっている組織を見立てます。検査から仮説を立て、状態を説明しながら施術を進め、施術後の検査で変化を確認します。アフターフォローではセルフケアもお伝えします。来院から施術後までの案内は、施術の流れをご覧ください。
みなさんは、仕事中、何分おきに立っていますか? 数えたことがなければ、今日だけ数えてみてください。それが、この記事のいちばんの実験です。
参考文献
- Dunstan DW, et al. Breaking up prolonged sitting reduces postprandial glucose and insulin responses. Diabetes Care. 2012;35(5):976-983. 資料を読む
- Loh R, et al. Effects of Interrupting Prolonged Sitting with Physical Activity Breaks on Blood Glucose, Insulin and Triacylglycerol Measures: A Systematic Review and Meta-analysis. Sports Medicine. 2020;50(2):295-330. 資料を読む
- Dzakpasu FQS, et al. Musculoskeletal pain and sedentary behaviour in occupational and non-occupational settings: a systematic review with meta-analysis. International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity. 2021;18:159. 資料を読む
- Partsch H, et al. Compression stockings reduce occupational leg swelling. Dermatologic Surgery. 2004;30(5):737-743. 資料を読む
- 厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針」(平成25年6月18日 基発0618第1号 別添) 資料を読む
- 厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」パンフレット 資料を読む
