肩こりと頭痛は、同じ人に一緒に出る。ここまでは誰もが知っている。分からないのは、どちらが先かです。

『肩がこると、夕方には頭が締めつけられる』『頭痛薬で頭は楽になるけど、肩は重いまま』。この記事では、首・肩のこりと一緒に出る頭痛の代表である「緊張型頭痛」について、世界でどれだけ多いのか、首肩の筋肉との関係を調べた研究、運動や理学療法の効き方、そして鎮痛薬の飲みすぎの話まで、順に数字で見ていきます。

株式会社COmedi 代表取締役 久保聖史

SUPERVISOR / この記事の監修者

久保 聖史

株式会社COmedi 代表取締役

資格柔道整復師

  • Asia Massage Championship2024 審査員
  • Massage World Championship2025 審査員
  • Asia Massage Championship2026 審査員

先に、すぐ受診すべき頭痛を外しておく

頭と首に手を当てる人物
※AI生成によるイメージ画像です。

肩こりと頭痛の話に入る前に、一つだけ。頭痛のなかには、整体の話をしている場合ではないものがあります。

厚生労働省の「こんな時は迷わず119へ」は、突然の激しい頭痛、ろれつが回らない、顔の片側がゆがむ、片方の手足に力が入らない、突然物が二重に見える、といった症状を、救急車を呼ぶ症状として挙げています。日本頭痛学会も、いつもと違う突然の強い頭痛、今までに感じたことのない頭痛、嘔吐と半身の動きにくさを伴う頭痛、50歳以上でこめかみの頭痛が続く場合などを、別の病気による頭痛(二次性頭痛)を疑うサインとしています。

突然の激しい頭痛や急な片側の脱力・ろれつが回らない・突然二重に見えるなどの症状があれば迷わず119番してください。いつもと違う頭痛や、50歳以上でこめかみの頭痛が続く場合などは、すみやかに医療機関へ相談してください。どちらにも当てはまらなくても、繰り返す頭痛は一度医療機関で種類を確認しておくのが先です。以下は、医療機関で「緊張型頭痛」と確認された方、または確認する前提で読む方に向けた内容です。

緊張型頭痛は、世界で多い頭痛の一つ

日本頭痛学会によると、緊張型頭痛は一次性頭痛(頭痛そのものが病気であるもの)のなかで最も多い頭痛の一つで、世界人口での有病率は38%。圧迫されるような、締めつけられるような痛みで、多くは両側。30分から7日続き、強さは軽度から中等度で、日常生活に支障は出ても寝込むほどではない、とされています。

月15日未満なら反復性、3か月を超えて月15日以上なら慢性。学会は、触診で頭部に痛みを伴うものと伴わないものに細分類している、とも書いています。つまり診断の段階で、「頭のまわりの筋肉を押して痛いか」が見られている。肩こりとの接点は、ここにあります。

筋肉の圧痛は、たしかに高い。でも向きは分かっていない

ノルウェーの一般人口を対象にした研究があります。30〜44歳の3万人に質問票を送り、慢性頭痛と答えた人を神経内科の医師が診察。慢性緊張型頭痛の人は、頭のまわりの8対の筋肉・腱を押したときの圧痛の合計点が、一般の人より有意に高い結果でした。片頭痛を併せ持つ人、両側に頭痛がある人、若い人ほど高かった。

ここで大事なのは、著者らが最後に書いた一文です。「筋肉の圧痛が頭痛の原因なのか、頭痛の結果なのかは、今後の研究で確かめる必要がある」。関連はある。向きは分からない。この記事のタイトルの問いに対する、研究のいまの答えがこれです。

首の痛みで日常がどれだけ制限されるかを測る指標(NDI)をまとめた2024年のメタ解析では、緊張型頭痛の人の平均は13.7点。片頭痛の16.2点より低いものの、首の痛みに関連する生活上の支障が報告されました。対象は診療施設での研究で、すべての頭痛の人にそのまま当てはまる数字ではありません。

ただし、どちらも横断的な観察で、因果は分かりません。NDIのメタ解析は、研究ごとの方法のばらつきが大きく、一般化には注意が要る、と著者らも書いています。

首肩の筋トレと、筋肉をゆるめる方法は、効いていた

首をゆっくり動かす人物
※AI生成によるイメージ画像です。

向きは分からなくても、「首肩に働きかけると頭痛が変わるか」は、介入研究で調べられています。

2022年のシステマティックレビューとメタ解析は、片頭痛と緊張型頭痛に対する運動の効果を19研究2,776人でまとめました。緊張型頭痛では、筋力トレーニングで痛みの強さが下がり(効果量−0.84)、中等度の効果とされています。ただし証拠の確実性は「非常に低い」。研究の透明性や再現性にも問題がある、と著者らは指摘しています。

2025年のメタ解析は、慢性緊張型頭痛に対する理学療法を9つのランダム化比較試験でまとめました。首・肩の筋力運動、筋肉をゆるめる方法、電気鍼を含む介入は、対照群に比べて頭痛の強さ(標準化平均差−1.17)と持続時間(−0.71)が小さく、筋肉をゆるめる方法と首・肩の筋力運動を含む介入では頻度も少ない(−1.36)結果でした。介入全体をまとめた数字で、各方法の効果が同じという意味ではありません。

てことは、「向きは分からないが、首肩に働きかけると、緊張型頭痛の強さ・時間・頻度が下がった研究がある」。これは理学療法の研究であり、整体の特定の施術効果を直接示したものではありません。ただし証拠の確実性は低く、「必ず効く」とは言えません。日本頭痛学会も、頻度の多い緊張型頭痛には予防薬のほかに、ストレスマネジメント、リラクセーション、理学療法、頭痛体操を推奨しています。

HALII TOKYO.で見てきたこと

研究の話と分けて、院で見てきたことを書きます。これは研究ではなく、ボクたちの経験です。

医療機関で緊張型頭痛と確認された方、または首・肩のこりに伴う締めつけられるような頭痛で来院された方のなかには、首肩の状態を見立てて施術を続けるうちに、頭痛の出方が変わった方が多くいます。とくに多いのが、「1週間のうちに鎮痛薬を飲む回数が、はっきり減った」という変化です。頭痛そのものがゼロになるより先に、薬に頼る日が減る。院ではこの変化を、首肩に働きかける意味の一つとして見ています。

ただし、これは院での経験であり、人数や割合を測った研究ではありません。変化の出方には個人差があります。「整体で緊張型頭痛が治る」「薬が要らなくなる」とお約束するものではなく、頭痛の種類の確認と、薬の使い方の相談は、医療機関で行ってください。

鎮痛薬は、週に1〜2日まで

肩こりと頭痛の話で、ボクが研究より先に知ってほしいと思っているのが、鎮痛薬の飲みすぎの話です。

日本頭痛学会は、鎮痛薬の飲みすぎで「薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)」に移行し、さらに頭痛が悪化することがあるため、鎮痛薬は週に1〜2日程度にとどめる必要がある、と書いています。肩こりからの頭痛だと思って、毎日のように薬で抑えているうちに、薬の使いすぎが頭痛を悪化させる一因になる場合があります。

週3日以上、鎮痛薬を飲んでいる。これに心当たりがあれば、整体の前に、頭痛外来か神経内科です。薬の整理は、整体ではできません。処方されている薬は自己判断で中止・変更せず、主治医に相談してください。

ボクが提案したい順番

ここから先は研究の結論ではなく、ここまでの資料を見たうえでの提案です。

  • まず、頭痛の種類を医療機関で確認する。緊張型頭痛か、片頭痛か、別の病気か。これが決まらないと、首肩に働きかけてよいかも決まらない。
  • 鎮痛薬の回数を数える。週3日以上なら、薬の整理が先。
  • そのうえで、首肩の筋肉を「ゆるめる」と「鍛える」の両方を試す。研究で調べられたのは、ゆるめる方法だけでなく、首・肩の筋力運動も含まれます。症状や運動の適否は医療機関で確認してください。日本頭痛学会の頭痛体操は、学会のホームページからダウンロードできます。

3つとも、「やれば頭痛がなくなる」と約束するものではありません。首肩に働きかける研究の証拠は、確実性が低いものです。

整体院で、頭痛の話を聞く理由

HALII TOKYO.の頭痛のページには、頭痛には一次性頭痛と二次性頭痛があり、痛み方だけで自己判断せず、繰り返す場合は医療機関で種類を確認するよう書いてあります。突然の経験したことのない激しい頭痛、手足の麻痺・しびれや発熱を伴う頭痛は、整体や鍼灸の予約より医療機関での確認を優先してください。

そのうえで、首・肩のこりに伴う締めつけられるような頭痛については、問診と検査で首肩の状態を見立て、身体の状態を説明しながら施術を進め、施術後にもう一度検査をして変化を確認します。アフターフォローでは、状態の説明とあわせて、ご自宅でできるセルフケアをお伝えします。

最後に一つ。先週、頭痛薬を何日飲みましたか? 数えて、3日以上なら、この記事の順番の2番目から始めてください。

参考文献

  • 厚生労働省「こんな時は迷わず119へ」 資料を読む
  • 一般社団法人 日本頭痛学会「2次性頭痛(危険な頭痛、他の病気に伴う頭痛)」 資料を読む
  • 一般社団法人 日本頭痛学会「緊張型頭痛」 資料を読む
  • Aaseth K, et al. Pericranial tenderness in chronic tension-type headache: the Akershus population-based study of chronic headache. The Journal of Headache and Pain. 2014;15:58. 資料を読む
  • Al-Khazali HM, et al. Systematic review and meta-analysis of Neck Disability Index and Numeric Pain Rating Scale in patients with migraine and tension-type headache. Cephalalgia. 2024;44(8). 資料を読む
  • Varangot-Reille C, et al. Effects of Different Therapeutic Exercise Modalities on Migraine or Tension-Type Headache: A Systematic Review and Meta-Analysis with a Replicability Analysis. The Journal of Pain. 2022;23(7):1099-1122. 資料を読む
  • Onan D, et al. The efficacy of physiotherapy approaches in chronic tension-type headache: a systematic review and meta-analysis. Journal of Oral & Facial Pain and Headache. 2025;39(1):34-48. 資料を読む